<抗議声明>

7月18日、神戸地方裁判所101号法廷で、人民新聞弾圧事件の判決公判が行われ、川上宏裁判長、市原志都裁判官、髙嶋美穂裁判官は、山田編集長に対し「懲役1年。執行猶予3年」の有罪判決を言い渡しました。人民新聞編集部は、強い怒りをもって抗議します。

今回の事件は、要するに「過激派」に送金しているのを止めたいのだが、それ自体は法違反にならないので、「キャッシュ・カードを自分以外の人間に使用させたのは詐欺罪」という公安警察の無理を承知の逮捕・起訴であり、判決はこの公安のストーリーを追認しただけのものです。これが懲役1年、執行猶予3年の刑罰に値するというのですから、驚きです。

判決は社会に大きな影響を与えるものですから、裁判官は慎重に考慮するべきものですが、神戸地裁の3人の裁判官は、いとも簡単に公安に奉仕する軽薄な判決を出しました。これが一般に適用されると、市民団体や企業の日常活動への影響は大きく、一般家庭の子どもへの仕送りもできなくなります。安倍首相だって秘書に預けているカードを回収しなければならないでしょう。

しかし権力は、企業の社長や一般家庭にこれを適用する気はありません。「あくまで権力に逆らう輩だけに適用するので、他の人々は安心しなさい」という暗黙の了解があるのです。安倍首相が成立させた秘密保護法や共謀罪などと同じです。法の適用は権力の恣意に依るのです。

つまり、「法の前の平等」という法治原則は葬り去られ、権力者の恣意による専制主義の時代に入ったことを意味します。安倍首相の森友・加計疑惑などの逸脱行為には法が適用されないことにも、法治主義から専制主義への移行が見られます。
今回の弾圧事件は、公安警察のハラスメントを銀行資本と裁判所が奉仕・支援するという形で進行したことも、専制主義の到来を示唆しています。

これは世界的傾向で、歴史は再び市民革命を要求しています。人民新聞編集部は、安倍政権の専制政治に終止符を打ち、協同・共生社会の実現に向け紙面改革に取り組みます。

引き続きご支援ご協力をお願いします。

2018年7月20日 人民新聞社

6.30判決前集会へのアピール(山田編集長は無罪だ! 判決前大集会アピール)

               オリオンの会

集会に集まられた皆さん!今回の弾圧に抗議し、人民新聞を支援する多くの方々とスタッフの皆さん!
山田編集長への無罪判決を勝ち取るべくアピールを送ります。
今回の弾圧は、パレスチナ解放闘争の戦士である岡本公三さんをテロリストとしてイメージ付け、それを支援する人たちへの弾圧、そして闘う民衆の新聞である人民新聞への言論弾圧としてあります。
キャッシュカードを第三者に預けお金をおろしてもらうことなど、誰でもやっている日常的な行為です。それを「詐欺」だなどと言いがかりをつけ弾圧の口実にしました。この行為がもし「罪」として問われるならば、全国で数万、いや数十万人にもなるかもしれない人達が罪に問われることになります。
山田編集長に無罪判決が出るのは至極当然なことであり、むしろこの様に無理やりにこじつけ、「罪」とも言えない口実を探し出し弾圧を行った警察、検察こそ裁かれるべきです。
今後無罪判決を勝ち取ったあかつきには、新聞発行に多大な損害を与えたことへの国家賠償訴訟も検討すべきであると考えます。

そもそも岡本公三さんが闘ったテルアビブ闘争は、パレスチナ解放闘争の一環であり、彼の釈放はイスラエル兵と解放闘争の戦士たちとの戦時捕虜交換として国際赤十字が仲介したものです。2000年3月に日本赤軍関係者が日本へ強制送還されるなか、岡本さんはレバノン国への政治亡命が認められました。政治亡命者の身分は国際法上規定されているにも関わらず、日本の国家権力は岡本さんを「逃亡中の犯罪者」として手配しています。そして今回のように彼の生活、闘病支援をする人たちを弾圧しようとしているのです。

この5月、米国トランプ政権は国際合意を無視しテルアビブにある大使館を、聖地エルサレムへ移転しました。パレスチナではそれへの抗議行動として、3月30日の「土地の日」から祖国の解放、難民の帰還を認めよと、「グレート・リターン・マーチ」と呼ばれる壮大なデモが行われてきました。イスラエルはその抗議行動に対して空爆や実弾射撃を行い、60人を超える死者と3000人近くの負傷者を出しました。この過酷な弾圧に世界中の心ある人々は、イスラエルの虐殺行為を非難し、連帯の抗議活動を行っています。パレスチナやイスラエルの現地報告を一貫して伝えてきた人民新聞の役割は今後も大きなものがあります。今回のような弾圧でめげる訳にはいきません。

私たちオリオンの会の有志は、東京・関東での購読者層の拡大を図るため読者会の立ち上げに参加しました。今後も岡本公三さんへの支援活動と共に、読者会を活発化させていきたいと思っています。
7月18日には無罪判決を勝ち取りましょう。
ありがとうございました。

人民新聞弾圧の意味を考える(山田編集長は無罪だ! 判決前大集会レジュメ2)

阪南大学准教授&2012年関西大弾圧当該 下地真樹

1.なぜ公安警察はああなのか? 公安警察の特殊性

・国家体制に対する脅威に対応。 → 国家体制+権力者集団への忠誠 に容易に転化。
・警察は本来「犯罪事案」へ対応。 → 予防的措置。監視と情報収集。活動妨害。

・ 犯罪事案があり、その真相究明と処罰のために、強行的権力(逮捕等)を行使。

・ 公安の場合、予防的目的のために、強行的権力を行使する「口実として」事件化。

・ 微罪逮捕。拡大解釈。事案の創作。etc….

ある事案の「犯罪性=個人の自由や尊厳に対する脅威か否か」は度外視。

・ 常に存在する法の間隙がこのような意図で埋められることはきわめて危険。

2.対象を拡大し、手法を開発し、社会に浸潤していく公安権力。
・ 対象の拡大。市民運動、労働組合運動なども対象としていく。
・ 手法の開発。「事件化」の手法の開発。

・公務執行妨害⇒ 威力業務妨害、建造物侵入、不退去。最近では、旅行業法違反。

・「黙示の共謀」 …… 共課したかどうかは、いとも簡単に認定される。

・ 共謀罪 …… 共謀したこと自体が犯罪化された、ということ。

・犯罪事案の捏造よりも、共謀したことの捏造は、容易かつ反証困難。

新法制定による範囲拡大と同時に、運用変更や前例作成による範囲拡大にも注視。

・ 社会的分断。活動の犯罪化、あるいは「犯罪者」との印象の流布。

3.「報道機関に対する弾圧である」ということ
・民主国家と暴力

・「法」≒「違反に対する強行処分の可能性」(=公的暴力)。

・ 私的暴力を減らすために導入される公的暴力。実は、どちらも同じ暴力。

・法治国家の根拠とは、私的暴力+公的暴力の最小化(+暴力廃絶の理念)。

・ 公的暴力の監視と抑制こそ重要。(これがないなら私的暴力の蔓延と同じ)

・市民運動、労働組合、そして、報道機関。

・ 既に、民主社会に不可欠な社会批判機能を持つた組織が対象。

・公的暴力の監視と抑制を、公的暴力自身が解こうとしている。

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6月30下地さんレジュメ

山田さん・人民新聞弾圧裁判の争点(山田編集長は無罪だ! 判決前大集会レジュメ1)

2018年6月30日
山田さん弁護団弁護人:橋本太地

【解説】
〔刑法〕
第246条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺行為→錯誤→交付行為,という因果関係が必要。被害者が詐欺だと気付いたら未遂に留まる。
「本当のことを知っていれば交付しなかった」と言える場合に詐欺罪が成立する(判例・通説)。
批判:処罰範囲が広すぎる。
例:「阪神ファン生ビール無料」の居酒屋に巨人ファンが行って,阪神ファンを名乗りサービスを受けた場合。

◎参考判例1
最高裁平成14年10月21日最高裁判所刑事判例集56巻8号670頁
預金通帳は,それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず,これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴って銀行から交付される場合であっても,刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である(原審である福岡高裁は財物性を否定)。

◎参考判例2
最高裁平成19年7月17日決定最高裁判所刑事判例集61巻5号521頁
預金通帳等を第三者に譲渡する意図であるのに,これを秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み,預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
◎裁判所の背景には,振り込め詐欺やマネーロンダリングに銀行口座が利用されている現状がある。
→山田さんの使用方法は関係ないはず。
※詐欺の手段とされる行為を詐欺として処罰=処罰の早期化=共謀罪と発想は同じ!

本人の手を離れて,第三者が自由に利用できる状態にされていた場合なら,確かに問題かもしれない。
→山田さんは自らパスフレーズを管理し,レバノン在住の岡本さん支援者は山田さんの指示なしには出金していなかった。

〔刑事訴訟法〕
第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

起訴するか起訴しないかは検察官の裁量に委ねられている。
例:籠池夫妻起訴⇔佐川不起訴

逮捕勾留後不起訴も多い。
しかし,世間は逮捕=犯罪者という認識
起訴するつもりのない逮捕によって犯罪者というラベルを貼られるおそれ
例:RADWIMPS抗議デモでの不当逮捕

公訴権濫用論を裁判所は事実上否定(最高裁昭和55年12月17日最高裁判所刑事判例集34巻7号672頁)

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橋本弁護士レジュメ