2018年6月30日
山田さん弁護団弁護人:橋本太地
【解説】
〔刑法〕
第246条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
◎詐欺行為→錯誤→交付行為,という因果関係が必要。被害者が詐欺だと気付いたら未遂に留まる。
◎「本当のことを知っていれば交付しなかった」と言える場合に詐欺罪が成立する(判例・通説)。
批判:処罰範囲が広すぎる。
例:「阪神ファン生ビール無料」の居酒屋に巨人ファンが行って,阪神ファンを名乗りサービスを受けた場合。
◎参考判例1
最高裁平成14年10月21日最高裁判所刑事判例集56巻8号670頁
預金通帳は,それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず,これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴って銀行から交付される場合であっても,刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である(原審である福岡高裁は財物性を否定)。
◎参考判例2
最高裁平成19年7月17日決定最高裁判所刑事判例集61巻5号521頁
預金通帳等を第三者に譲渡する意図であるのに,これを秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み,預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
◎裁判所の背景には,振り込め詐欺やマネーロンダリングに銀行口座が利用されている現状がある。
→山田さんの使用方法は関係ないはず。
※詐欺の手段とされる行為を詐欺として処罰=処罰の早期化=共謀罪と発想は同じ!
◎本人の手を離れて,第三者が自由に利用できる状態にされていた場合なら,確かに問題かもしれない。
→山田さんは自らパスフレーズを管理し,レバノン在住の岡本さん支援者は山田さんの指示なしには出金していなかった。
〔刑事訴訟法〕
第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
◎起訴するか起訴しないかは検察官の裁量に委ねられている。
例:籠池夫妻起訴⇔佐川不起訴
◎逮捕勾留後不起訴も多い。
しかし,世間は逮捕=犯罪者という認識
→起訴するつもりのない逮捕によって犯罪者というラベルを貼られるおそれ
例:RADWIMPS抗議デモでの不当逮捕
◎公訴権濫用論を裁判所は事実上否定(最高裁昭和55年12月17日最高裁判所刑事判例集34巻7号672頁)
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橋本弁護士レジュメ